- 翻訳会社に訳文を納品したけど、フィードバックを全然もらえない。
- キツめのフィードバックをもらったんだけどどうしたら良いの?
- 翻訳会社からのフィードバック内容に納得がいかない。
このように、フィードバックに対してどのように対処したら良いか悩むことはありませんか?
僕は10年以上翻訳コーディネーターとして勤務しており、翻訳者さんへいくつものフィードバックを送ってきました。
また、最近副業でWebライターとしても活動していますが、自分で記事を書くようになって初めてフィードバックの大切さとありがたさがわかりました。
フィードバックってもらえないことの方が多いですが、自分の成長や改善のためにご意見をいただけるのってありがたいですよね。
今回は、翻訳会社からのフィードバックについて解説していきます。
この記事を読むとこんなことがわかります。
- フィードバックに込められた翻訳コーディネーターの思い
- よくあるフィードバックの種類
- ネガティブフィードバックを防ぐためには
- フィードバックがもらえないときの対処法
- フィードバックに納得がいかないときの対処法
くん太
- 社畜歴14年のアラフォー♂
- 北海道で生まれ育ち、現在は千葉県在住
- 現在は翻訳会社で翻訳コーディネーターとして勤務(勤続10年目)
通りすがりのウシ
- たまに通りがかっては何かとツッコミをいれてくる
- 普段は牧場でのんびり草を食べている
フィードバックに込められた翻訳コーディネーターの思い
翻訳者さんからご納品いただいた訳文は多くの場合、第三者による「校正作業」を経てソースクライアントに納品されます。
フィードバックが発生する場面としては主に下記のような感じです。
- ソースクライアントから翻訳会社へ、訳文に関してフィードバックをもらう
- 校正者がチェックした際に、訳文に関して翻訳会社へフィードバックをもらう
- 翻訳会社が社内でチェックした際に、気づいた点などを翻訳者へフィードバックする
翻訳コーディネーターはフィードバック内容を確認し、必要に応じて翻訳者さんにフィードバックを伝えます。
そのフィードバックにはこのような思いが込められています。
- 次回以降同じ失敗をしないでほしい
- 次回以降、同様の案件があったら反映してほしい
- 参考になって少しでも翻訳者さんのレベルアップにつながるとうれしい
しかしそれだけでなく、実は下記のような葛藤があるのも事実です。
- フィードバックを送ることで気を悪くしないか心配
- フィードバックが元でトラブルに発展してほしくない
- もう案件は受けたくないと言われたくない
そのためフィードバックの送付にはかなり慎重になります。
翻訳コーディネーターによっては、過去にトラブルになった事があるなどの理由からフィードバック内容をあえて共有しないという場合もあります。
そのような葛藤を経て送付されたフィードバックというのは、やはり今後に活かしてほしい、役立ててほしいという気持ちがこもっているのです。
フィードバックの種類
フィードバックというとネガティブなイメージをされる方もいるかもしれませんが、すべてがネガティブというわけではありません。
ソースクライアントや社内の校正者などから訳文のクオリティを称賛され、「ぜひまた同じ翻訳者さんに担当してもらいたい」というポジティブなフィードバックをもらうこともあります。
具体的にはどんなフィードバックがあるの?
よくある「ポジティブ」と「ネガティブ」のフィードバック例は下記のような感じです。
ポジティブフィードバックの例
- 読みやすい
- よく調べている
- 短納期に対応してくれた
- コメントがありがたい
ネガティブフィードバックの例
- 訳抜けがあった
- 誤訳があった
- スペルミスや数字の間違いなどのケアレスミスがあった
- 訳文が不自然で読みづらい
- 訳文のレイアウトが崩れている
- 依頼時の指示事項が順守されてない
- 納期が遅延した
- 参考資料が参照されていない
具体的な指摘がなく「間違いがあった」「読みづらかった」など、フィードバックの内容が不明確な場合は、どこがどう悪かったのか確認をするようにしましょう。
具体的な指摘内容がわからないと対策のしようがないですもんね。
ネガティブフィードバックを防ぐには?
そもそもネガティブフィードバックをもらわないようにするにはどんな対策ができるの?
先程ネガティブフィードバックの例を挙げましたが、これらを防ぐには以下のような手段が有効です。
▲気になる箇所にジャンプできます。
事前の仕様確認を徹底する
「原稿をもらったらいきなり翻訳を始める」もしくは「翻訳を始める瞬間まで原稿内容を確認しない」というのはNGです。
翻訳を始める前に最低限のことは確認し、事前に不明点があれば解消しておきましょう。
事前確認をしっかりすることで、あとから指摘されてやり直しになることを防げます。
<基本的な確認事項>
- ファイルが開けるか
- 和訳の場合は文体(「である調」や「ですます調」)はどうするか
- 翻訳の使用用途は
- 参考資料はあるか
- 参考資料がある場合は参照レベルはどの程度なのか(絶対参照?参考程度?など)
など
事前確認事項の詳細についてはこちらの記事を参考に御覧ください。
翻訳コーディネーターからの指示が漏れている場合もあるので、自分でしっかり確認し潰せる不明点は潰しておきましょう。
セルフチェックを徹底する
依頼内容によっては納期がとても厳しく、セルフチェックをする時間がないという場合もありますが、時間の許す限り極力納品前のセルフチェックはしっかり行いましょう。
スペルチェックなどはWordの機能でも行えます。
ケアレスミスが多いと「見直しをしていないのか」と思われて信頼に傷をつけてしまいます。
CATツールを使用して翻訳する場合は、訳抜けや用語集の不遵守、数字の間違いなど簡単なケアレスミスはQA機能を活用することで防げます。
Wordで翻訳をする場合は、プリントアウトして紙で読みながらチェックすることでデータ上で見落としていたミスに気付けることもありますよ。
リサーチを怠らない
翻訳作業においてリサーチは不可欠な作業です。
不明な用語などは必ずしっかりリサーチをして、裏付けを取った上で翻訳するようにしましょう。
リサーチすればわかる用語が使われていないと、「専門性がない」「リサーチをしない」という翻訳者として非常に不利な評価をされてしまう恐れがあります。
リサーチは用語の意味だけでなく、原稿の文書はどんな場面で使われるのかといった背景の調査も丁寧に行いましょう。
逆に、こうしたリサーチをしっかりしてくれる翻訳者さんは翻訳コーディネーターも安心できるので、非常に依頼しやすい翻訳者さんとして認識してもらえるでしょう。
同じ指摘を繰り返さない
ケアレスミスや調査不足などの不備を指摘された場合は、なぜそれが起こったのか、防ぐ方法はなかったのか振り返り対策を講じましょう。
一度指摘されたことを再度繰り返してしまうと、「フィードバックを見ていない」と思われ、ソースクライアントにも翻訳会社にも大きなマイナス印象となってしまいます。
ソースクライアントによって指摘内容が異なる場合があるので、混同しないように整理し、次回以降同じ指摘をされないようフィードバック内容を管理しましょう。
翻訳会社からフィードバックをもらえない場合は?
翻訳物を納品しても、フィードバックをほとんどもらったことがないんだけど。これは納品物に問題がないってこと?
フィードバックがない場合は「問題がない」というケースが多いですが、実はクライアントから翻訳会社にフィードバックがあっても、翻訳者へ共有していない場合もあるんです。
え・・なんで?
結論から言うと、翻訳コーディネーターが多忙で翻訳者までフィードバックを送れていないというのが大きな理由です。
ソースクライアントからフィードバックをいただいた場合は、通常下記のような流れで翻訳者さんに届きます。
ソースクライアント→翻訳会社→翻訳者
翻訳コーディネーターは複数の案件を多数同時進行しており、基本的にかなり多忙です。
翻訳者さんにフィードバックを共有し、「今後の参考にしてもらいたい」「レベルアップしてもらいたい」という気持ちはあっても、フィードバックを送付する余裕がない場合があります。
というのも、翻訳コーディネーターは翻訳者さんにフィードバックを送るときはかなり気をつかいます。
翻訳自体に問題はなかったのに校正者が間違えて修正したり、クライアントの指摘が間違えている場合もあるので、フィードバック内容が妥当かどうかを社内で確認したり、翻訳者さんの気を悪くしないように失礼のない表現を一生懸命考えたり・・。
そのためつい目先の業務に追われて対応が後手になり、送付ができていない可能性があります。
このあたりは、担当するコーディネーターの姿勢次第のところもあります。
納品時に「フィードバックがあればぜひ送って下さい。」と一言伝えるなど、フィードバックを望んでいるという姿勢を見せることで、翻訳コーディネーターの心理的障壁も下がり、実際にフィードバックが発生したときに送付しやすくなりますのでぜひ試してみて下さい。
納得いかないフィードバックをもらったら?
フィードバックの内容は必ずしも正しいというわけではありません。
特にソースクライアントの担当者のレベルはバラバラなので、時にはちゃんとした理由があって訳出を工夫した部分に指摘が入っていたり、修正されたことによってかえって品質が悪くなってしまうこともあるのが事実です。
修正の種類には大きく分けて下記のようなパターンがあります。
- 誤訳や脱字など、修正が必須なもの
- 明らかな間違いではないが、より標準的な用語・表現への修正
- 修正が必須ではないもの(好みによる修正など)
- 改悪(修正によってかえって品質を悪くしてしまうもの)
3〜4の場合はフィードバックとして送られてくるとムッとしますよね・・。
でもここは気持ちを抑えて冷静に対応しましょう。
「こんなフィードバックは納得いかない!」と熱くなって抗議してしまうと、翻訳コーディネーターに警戒されてしまいます。
実際、フィードバックが原因で翻訳者さんともめてしまうことはあります。
僕は翻訳者さんに電話で一時間以上お説教されたこともあります・・。
もちろん翻訳者さんの主張が正しい場合もありますが、「あの翻訳者さんにフィードバックを送るときは特に注意が必要」と翻訳コーディネーターに思われてしまっては、それ以降フィードバックを共有してもらえなくなる可能性もあります。
また、最悪の場合は翻訳依頼そのものが減ってしまうかもしれません。
フィードバック内容に納得がいかない場合は「この部分はこのような理由でこう翻訳しました。いただいたフィードバック内容だと✕✕になってしまい不適切だと思います」という感じで、コメントで端的に説明すると良いでしょう。
まとめ
フィードバックは成長のチャンス。
フィードバックをもらえたときは謙虚な姿勢で受け入れましょう。
対応を誤って翻訳依頼やフィードバックをもらう機会を減らしてしまうことのないように、以下の点に注意しましょう。
- フィードバックで指摘された内容は繰り返さず、次回以降の納品物に反映させる。
- フィードバックがもらえないときは、翻訳会社に問い合わせてみる(フィードバックウェルカムな姿勢を見せる)
- 納得いかないフィードバックをもらったときは、冷静に謙虚な姿勢で指摘する。(熱くなるのはNG)
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